ニュースレター第9号

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2022年1月5日 第9号
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カジノを含むIR(統合型リゾート)は本当に経済的繁栄をもたらすのか
~大阪の区域整備計画を検証する~

大阪カジノに反対する市民の会・代表 西澤信善

 2021年12月21日、大阪府市はIR(統合型リゾート)区域整備計画(案)の骨子を発表した。これは、21年9月にIRの事業者として認定された米国のMGMリゾーツ・インターナショナルと日本のオリックスのコンソーシアムが、大阪府市と共同で策定した夢洲開発計画である。
この区域整備計画は22年2月から3月にかけて大阪市会および大阪府議会で承認を経て、4月までに国に承認を申請される。国で承認されれば、いよいよ大阪にもカジノを含むIRが実現することになる。
開業時期として遅くとも2029年度末までを見込んでいる。このIRこそ大阪維新の会が大阪経済活性化の切り札として2010年代の初めからその実現に向けて邁進してきたものである。果たして、維新の会や大阪府市がいうほどの経済効果があるのか、本小論はそのことを検証したものである。
夢洲は大阪北港にある390ha(埋め立て完了時)の人工島である。1977年、埋め立て免許を取得、以降、廃棄物処分地として整備が着手された。1991年には土地造成事業が開始された。今は島の東側にコンテナターミナルがあるが、この地区は将来的にはスーパー中枢港の中核施設として国際物流の拠点になることが構想されている。それ以外の土地は空き地となっている。その空き地の南側の155haが2025年に開催予定の万博に、その北側の49haがIRとして利用されることになっている。
夢洲は浚渫土砂、建設廃材、ごみなどを埋め立てて造成された人工島である。軟弱地盤と土壌の汚染はつとに指摘されていたものである。報道によれば、夢洲の新駅予定地付近に基準を2~3倍上回るヒ素と1.5倍上回るフッ素が検出されたという。恐れていたことが現実になったのである。夢洲は現在の汚染基準が適用される以前から埋め立てが始まっているためこうした事態は十分に予想されていた。
21年12月、大阪市は夢洲の液状化対策および汚染土壌の浄化にかかる約790億円の費用を市港営会計(公費)で負担することを明らかにした。人口40万人の豊中市の1年間の税収が700億円程度であるから、それがいかに巨額なものか分かるであろう。
市港営会計が赤字になれば一般会計から税金をつぎ込まねばならない。「ばくち場にそんな巨額の金を投じるくらいならコロナ対策に金を投じるべきだ」というのは至極まともな意見である。
しかも、今後も土地改良費が増えないという保証はない。時間が経つにつれて地盤沈下が進行するかもしれない。その改善費用は契約後でも瑕疵担保責任により公費負担である。すなわち、カジノ業者が納付金を収めたところでそのいくらかは確実に土地改良と依存症対策(骨子では55億円)に使われるのであろう。
統合型リゾートとは娯楽・観光施設を主とするさまざまな諸施設を特定の区域に集中させ、それら諸施設のシナジー効果を図りつつ一体として観光ひいては地域振興を目指すものである。それでは区域整備計画ではどのような施設がつくられるのであろうか。それらは、①国際会議施設、②展示等施設、③魅力増進施設、④送客施設、⑤宿泊施設、⑥エンターテイメント施設、⑦飲食・物品販売・駐車場・エネルギーセンター、そして⑧カジノ施設である。
統合型リゾートにはMICEの謳い文句の陰に隠れて、ここにこっそりカジノ施設が含まれていることに注意を払いたい。われわれはIR構想そのものに反対しているのではない。複合施設の中にカジノがふくまれていることを問題にしているのである。なぜか。カジノは賭博であり、賭博は刑法で禁止されているからである。特別法で違法性が阻却されているとはいえ、刑法の規定が生きている限り違法であることに変わりない。
大阪府市、維新の会の言い分はこうである。「ギャンブルの弊害はあるが、それらには十分な対策をとる。なによりも、IRは沈滞した大阪経済を活性化し、違法性を阻却するだけの大きな経済効果が見込める」(趣旨)というものである。はたしてこれを鵜吞みにしていいものであろうか。
この度、明らかにされた区域整備計画では、上で言及した諸施設の建設に1兆800億円規模の金が投じられ、その波及効果を含めれば建設時に近畿圏に1兆5800億円の経済効果が生じるとしている。これだけの金を誰が出すのか。
実は今回の公表とこれまでいわれてきたことと大きく食い違っているのは資金計画である。これまで一般には1兆円もの投資額の大半をMGMとオリックスのコンソーシアムが出すとみられていた。松井大阪市長は府知事時代、「今どきⅠ兆円もの金をだしてくれるのはどこにあるのか」と大阪にカジノ誘致を働きかけたカジノ業者に秋波を送ったものである。
ところが蓋を開けてみると、1兆800億円の初期投資額は、出資金で5300億円(出資割合49%)、借入金で5800億円(同51%)それぞれ調達するという。出資金の内訳は、MGMとオリックスがそれぞれ約40%(2120億円)、少数株主が約20%(1060億円)となっている。
IR事業推進のために新会社、「大阪IR株式会社」が設置される。同社は、カジノ運営業者であるMGMとオリックスを中核株主とし、少数株主には、関西電力、パナソニック、JR西日本、近鉄など関西系の有力企業20社が名を連ねる。もちろん、同社でリーディングな役割を担うのがMGMとオリックス、とりわけカジノ運営のノウハウをもつMGMであろう。一般に企業が投資するには十分に回収の見込みがあってのことである。
ではこの区域整備計画で投資資金の回収を約束してくれるものは何か。それがカジノである。カジノ業者の年間の粗利益(GGR)は整備計画では4200億円である。GGRはIR全体の諸施設売上の8割を占める。現段階ではカジノの収益が1兆800億円の初期投資額回収にどのように充てられるかは不明であるが、カジノのGGR4200億円が返済のエンジンになることは明らかである。
骨子では年間来場者を約2050万人と想定し、IR運営に伴う近畿圏の経済波及効果を1兆1400億円と見込む。これは波及効果を含んだ金額であるが、IR全体の売上はおよそ5200億円、上述のようにそのうちカジノの売上すなわち粗利益(GGR)が4200億円、80%を占める。GGRとはカジノ業者の儲けである。言い換えれば、賭け客から勝負で勝って巻き上げた金のことである。賭博では金は、賭けで負けたものから勝った者へ一方的に流れる。金の流れには対価を伴っていない。対価を伴っていないがゆえに「巻き上げた」という。もちろん、賭け客が勝つこともある。GGRというのは、賭博で勝ったり負けたりして最終的にどちらにどれだけの金が流れたのかという概念である。したがって、カジノ業者のGGRが4200億円というのは、言い換えればそれだけの金を巻き上げられた客が死屍累々と横たわっていることを意味する。巻き上げられるのは誰か。それが大阪市民であり、大阪府民であり、そして内外の観光客である。こうして巻き上げた金から従業員に賃金を払い、国と自治体に納付金を納めるのである。
夢洲は金食い虫である。南海トラフ地震も心配せねばならない。これからまだどれだけ金がかかるかわからない。1兆円投資するといっても、それは結局、大阪市民・府民そして内外観光客から金を巻き上げて回収するだけの話である。そのうえギャンブルの弊害が顕著になればたまったものではない。実際、ギャンブルは依存症、環境の悪化、犯罪、資金洗浄などの社会災害もたらす。カジノ業者が大儲けするということをもって経済効果などといっても、その実態をよくみれば全くの空疎な言葉に過ぎない。カジノ業者が儲ければ儲けるほど、他方では金を巻き上げられた哀れな賭け客が巷にあふれるであろう。これが賭博による地域活性化の現実であり、いま世界的な潮流になりつつあるSDGs、EGS投資そしてPRB(責任銀行原則)の精神に逆行していることは明らかである。


IR区域整備計画への反対意見は誰でも大阪府・市に出せます。

大阪府・市がIR区域整備計画を決定する際、当然、府民・市民の意見を聞き、尊重しなければなりません、ところが、大阪府・市が府民の声を直接聞く公聴会は1月23日、24日、28日、29日の4回開催。申し込みは1月8日まで。この会報が会員の皆さん届いたころは、申し込みは目前。これが、維新の会が主張する身の切る改革でしょうか。
説明会は11回開催されます。応募締め切りは1/5~2/4。都合のいい会場に一度参加してみて下さい。ただし、参加者は意見を言えません。
パブコメは1/21が締め切り。紙に住所氏名を書けば、誰でも大阪府・市に郵便、FAX、メールで反対意見を送れます。そこで、その用紙「「大阪・夢洲地区特定複合韓国施設区域の整備に関する計画」(案)に対する府民意見等募集について」を同封しました。反対理由がいくつもある方は、該当項目ごとに書いて出せます。


私の反対意見

大阪カジノに反対する市民の会運営委員 児玉俊英

公聴会は4回とも申し込みました。パブコメも出します。主な理由は次の通りです
1-1.収支計画のIR事業全体の年間売上高 約5200億円の内、約80%の約4200億円がカジノ部門の収益、即ち表面的には統合型リゾートIRと表示しているが、大阪IRの実態は、カジノ・ギャンブル産業そのものである。
1-2.一方、国際的な金融・投資の世界では、ESC(持続可能性をめぐる環境・社会・ガバナンス=自社統治)金融が重視されており、このESGの前提となるSDGs(国連の持続可能な開発目標)に整合しないとされているギャンブル産業への今回のMGMリゾーツ等のIR事業者による融資の決断・決定が、これからの計画立案・決定・建設実行・完成・運用に至る極めて長期間に亘って確実に維持されるという補償は存在するのか。
1-3.更に、博打そのものである大阪IRカジノ自体が、SDGsに反するものとして国際的な批判の対象となるリスクが生じないと断言できるのか。また、国際的な
批判に反論するすべが存在するのか。
2-1.IR事業の実現には、現時点での不確定事項・課題(新型コロナウイルス感染症の影響、国の詳細制度設計、夢洲特有の課題等)の解決が必要不可欠である。」とある。
2-2.特に新型コロナウイルス感染は、目下、オミクロン株等が、ワクチン接種が進む主要各国で史上最多の感染状況を呈しており、我が国もそれに追従する情勢である。コロナ感染に関して言えば、上掲の「課題の解決」とはコロナ感染の収束を確認することである。それにも拘わらずそれを無視し、大阪府・市は、令和4年2~3月各議会で議決、4月には国へのIR開設申請へと突き進んでいる。
2-3.昨年コロナ対策を理由に国共々IR計画を中断延期したように、ここは大阪IR計画遂行を一旦中断し、コロナ対策に行政能力を集中するのが本来の行政姿勢ではないのか。


ギャンブル依存症対策が無責任

大阪カジノに反対する市民の会 事務局長 堀田文一

大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)【概要版】によると、IR区域への来訪者数約2000万人/年、年間売上5200億円、大阪府・市の収入見込み額約1060億円と大阪府・市に大金が集まるように書かれている。
ところが、このIR施設の開設によって
ギャンブル等依存症が必然的に発生する。ギャンブル等依存症対策の必要経費は約14億円に過ぎない。
【概要版】によると、「MGMにおいて導入実績のある責任あるゲーミングに関する、顧客への啓発や授業印教育を含む包括的プログラムを、日本の実情に合わせて導入」する。すなわち、「責任あるゲーミング」だからギャンブル等依存症の弊害を軽視する。それなら、「MGMにおいて導入実績のある責任あるゲーミングの実績」を白日の下に晒すべきだ。
ギャンブル等依存症にはまった人は、自分を壊し、家族・親族関係を破壊し、生活を支えてきた地域経済生活活動にも重大な影響を与える。生活保護や、服役などの公的措置が必要なことも少なくない。それらの経費をトータルするとばく大なものになる。外国のIRカジノで106億円も負け越した日本人がいた。大阪府・市はカジノのデメリットを集計しない。
ギャンブル等依存症で気になるのは、IRカジノは、幾晩も徹夜で、酒を飲みながらバクチをすること。これらについては全く規制がない。
ここをまず規制をと、私はパブコメでも意見を提出し、公聴会でも発言したい。


10月16日講演会報告

聞き手(まとめ) 熊谷貞俊

対談『大阪カジノは何故ダメなのか』桜田照雄先生に聞く

概要
阪南大学流通学部教授の桜田先生は米国会計学が御専門ですが、最近、カジノ管理委員会にIRカジノ事業の会計報告(CTR)の審査内容につき、質問状を提出されておられます。しかし管理委員会にはカジノ会計の専門家がおらず、早くも管理体制の不備が暴露されました。今回の集会では、カジノ誘致につき、その危険性に早くから警鐘を鳴らされている桜田先生に以下の6点につきお話を伺いました。

  1. なぜ大阪府市だけがカジノ誘致にここまでしゃかりきなのか?
  2. 万博も含め、なぜ、その候補地が夢洲でなければならないのか?
  3. 世界最高レベルのIRカジノってどんなもの?
  4. 本当に観光振興、地域経済活性化に役立つの?
  5. カジノ事業の危険性と社会コストは?
  6. 住民無視の行政の独走をストップさせるのは?

約40分の限られた時間で、十分なお話が伺えたかどうか心配ですが、おおむね以下のような内容でしたので報告いたします。
まず、夢洲をはじめ大阪湾岸部の埋立事業そのものが、2府4県にまたがる広域産業廃棄物処理場としての開発目的であったフェニックス計画から、オリンピック誘致の失敗、テクノポート計画、そして万博、IRカジノ誘致に伴う夢洲まちづくり計画へと野放図、場当たり的に計画変更がなされ、その都度、WTC やATC破綻に象徴されるような無駄な巨額インフラ投資が垂れ流されてきた経緯からして、今回のI Rカジノ誘致計画そのものが大阪湾埋立事業の失敗の尻拭い、さらなる失敗への無反省な繰り返しとなることが危惧されるということで対談が始まりました。
そして、世界最高水準のIRカジノとは、要するに、IR施設全体の総床面積が、その3%である賭博場で十分なカジノ収益が確保できるように大規模に計画設計されているということに過ぎないこと、国際会議場や展示場は大阪への需要から見て経済的な寄与はほとんどなく、また、2500室の宿泊施設に至っては、年間2000万人以上の来場者をどのように収容するのか全く辻褄の合わない杜撰な構想であること、また軟弱地盤に恒久的な巨大施設を建造することの無謀さが指摘されました。
365日年中無休の賭博場への来場者囲い込みが、なぜ観光振興、地域経済活性化に役立つのか、むしろ、この計画通りなら、他地域への観光誘致や、近隣地域の経済振興にはマイナスの影響しかないことが明らかになりました。
何の付加価値も産まず、賭け金の形で個人の金が一方的にカジノ事業者に収奪され、更なるギャンブル資金のための貸金事業まで認められた民営カジノという、従来の公営ギャンブルとは比較にならない危険極まりない事業に依存する経済振興などあり得ないこと、個人の依存症被害、経済破綻、生命危機のみならず、家族崩壊、借金取り立て等の暴力団の暗躍、マネーロンダリングや不正送金などの組織犯罪など、おおよそ、最近声高に提唱されているSDGsとは真逆なビジネスモデルを行政や財界が旗振り役で推進するなど、正気の沙汰ではないことが強調されました。
1999年当時の石原都知事が言い出し、橋下府知事が同調したカジノ誘致も、当初は法務省が賭博罪を免責するための公益性確保などの8要件を必須としていたため、一旦たち消えましたが、安倍政権になり、2016年にカジノ推進法、2018年にカジノ実施法が制定されるなど、民営賭博の違法性阻却に関する法的規制が曖昧化されています。それを良いことに、維新政府の牛耳る大阪府市では、コロナ後の社会・経済状況の変化も無視して、現在、カジノ誘致推進の方針を変えていません。
大多数の住民のカジノ反対の意向を無視した行政にストップをかけるには、市民運動を節目節目で、さらに活発化し、首長選挙や、議員選挙等において、カジノ問題を争点に取り上げるよう候補者・政党に呼びかけることが大事であること、また、この事業が長い目で見て、社会的にも経済的にも引き合わないSDGsとは真逆な劣悪なブジネスプランであることを事業者側に納得させて、先に撤退した賢明なラスベガスサンズのように、自ら日本進出を諦めさせることなどが肝要であることなどが最後に話し合われました。
以上


リーフレット訴訟顛末記

大阪カジノに反対する市民の会・代表 西澤信善

 大阪府市が作るIR(統合型リゾート)推進局は、2018年度および19年度にギャンブル依存症予防教育の一環として高校生・支援学校生向けにリーフレットを配った。このリーフレットは問題が多いと声を上げられたのが、井上善雄弁護士である。
井上弁護士は住民監査請求を提起され、我々も原告団に加わった。この監査請求は予想通り棄却され、裁判に移行した。一審の地裁で敗訴、二審の高裁でも敗訴そして最高裁への上訴もあっさりと棄却された。連戦・連敗である。
さすがに打ちのめされた。しかし、我々は本当に負けたのであろうか。実は、IR推進局が作成したリーフレットは20年度から配布されていない。それの取り扱い部局もIR推進局から大阪府の「こころの健康相談室」に変わっている。我々が目指したのは、このリーフレットはギャンブルの実態を正確に伝えていないのみならず、むしろ誤解を与えるものであるからその配布を差し止めることであった。

結果はどうであったか。裁判では止めることはできなかったが、IR推進局が自主的に判断して差し止めたのである。裁判で勝訴しているのになぜ配布をやめたのであろうか。誰しも抱く疑問である。端的に言えば、IR推進
局さえも「このリーフレットは問題がある」と認めざるを得なかったのであろう。確かに裁判では敗訴であるが、実質的に差し止めたのであるから勝訴とみてよいであろう。
 しかしそれにしてもである。行政ですらその配布が不適切である判断したものを、こともあろうに地裁も高裁も問題ないとの判決を下したのは驚きとしか言いようがない。三権分立という言葉は高校生すら知っている。政治が変わらなければ、判決も変わらないと聞いたことがあるが、司法の世界にも「忖度」が入り込んできているとすれば今の日本で由々しき事態が進行していることになる。
我々は今でも決して高すぎる要求をしたとは思っていない。日本ではギャンブル(賭博)は刑法で禁じられている。つまり違法である。違法な賭博が認められるには、特別法
で違法性が阻却されることが必要である。
我々の主張は、リーフレットではそのことに何も触れていないのは問題があると主張しただけである。日本は法治国家である。リーフレットでは賭博は法的にどういう扱いになっているかを正確に伝える必要があるだろう。しかるに、地裁の判決は、「それを伝えなくても必ずしも問題があるとはいえない」(趣旨)というものである。
裁判官は法の番人である。普通の市民がリーフレットに法の精神、法の扱いを書き込まないといけないと言っているのに裁判官がその必要がないと言っているのである。裁判官に対する尊敬が崩れた瞬間であった。
 最後に、このリーフレットの問題点を指摘され、訴訟に持ち込まれた井上弁護士の慧眼とご尽力に敬意を払いたい。


投稿

大阪カジノに反対する市民の会運営委員 井上眞理子

「ギャンブル大国」にこれ以上民営ギャンブルはいらない!

 日本はいま現在も既に「ギャンブル大国」と言われている。その理由は、7つの公営ギャンブルと1つの民営ギャンブルの売り上げが国家予算(一般会計総額)の約30%に該当するからである(2016年度)。公営ギャンブルには、「公営競技」すなわち競馬(中央競馬、地方競馬)、競輪、オートレース、競艇、に加えて宝くじ、スポーツ振興くじ、がある。
「民営ギャンブル」は制度上存在せず、パチンコは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の下で「賭博」ではなく「娯楽」とされているが、「景品の換金化に付随した循環過程」の実態からすれば「民」による「私営ギャンブル」と言える(福井弘教、2017参照)。ギャンブルの売上高を見るとパチンコのそれが際立って多く(例えば競馬の売り上げが3兆.8958億円に対してパチンコの売り上げは14兆6,000億円)で日本のギャンブル売り上げの65%を占めている(2021年 11月現在)。
 こんな「ギャンブル大国」になぜいまさら民営ギャンブルの「カジノ」が必要とされるのだろうか。問題の起源は安倍元首相が吹聴したアベノミクスの「第3の矢」に遡る。第3の矢は民間投資を喚起する成長戦略であり、安倍政権はカジノを含むIR推進法案に本腰を入れ始め、2014年に発表された「日本再興戦略改訂2014」においては、外国人観光客の受け入れ環境整備、MICE(会議、ミーティング、娯楽、展示、見本市等を総合したビジネスイベントあるいはその施設)の誘致と外国人ビジネス客の取り込みを謳っている.
 それにしても「カジノ」は賭博であり刑法185条および186条で禁止されているのになぜ合法化されるのか。秘策は刑法35条「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」にある。これは法律の内部的矛盾を解消するための規定で、カジノを適法とする法律「IR推進法」を制定することで難問をクリアした。競馬等の公営競技の場合も公営競技に関する特別法を制定している。ただ刑法が賭博を犯罪としている趣旨と整合させるため、法務省は8つの考慮要素を充足することを要求しているが内容は曖昧かつ変転している。
 アベノミクスの第3の矢の具体化=外国人観光客を呼び込み、経済効果を上げるというふれ込みのカジノを含むIRであるが、コロナ禍により大きな計算違いが発生した。大阪府・市がIRの事業者に選定したオリックス(MGMリゾーツ・インターナショナルと共同)は、インバウンド観光客の激減を受け「客は全員日本人、日本人だけでどれだけ回るか」と事業構想の変更について発言している。また同じくコロナ禍を経て、MICE施設の位置づけも変化している。コロナ禍で会議をオンラインで代替開催したことの成功により、従来の会場規模は必要ではなく、コンパクトで使い勝手の良い施設へのニーズが台頭している。
 大阪府・市は「日本最大の複合MICE施設」と打ち上げていたが、コロナ禍によるインバウンド観光客の激減とMICE施設の位置づけの変化を受けて自らのプランを見直さざるを得なくなっている。
生物多様性のホットスポットであり、野鳥たちの飛来地・営巣地である夢洲にカジノを含むIRはいらない!それこそがSDGsを謳う万博に相応しい。


会員の皆さんへ、市民の会からのお願いです
大阪カジノに反対する市民の会は、市民が力を出し合って結成し、運営している市民団体です。カジノ反対の世論を大きくすることで、カジノ誘致を止めようと考えています。
世論を大きくするには、市民の会の会員を増やすことです。現在、会員数は369名です。会員が1000名を超えたら、大阪の世論が動き始めると考えています。そこでお願いです。

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