熊谷貞俊(大阪大学名誉教授)
大阪カジノに反対する市民の会顧問の熊谷です。今から8年前、2010年4月、超党派議員連盟である“国際観光産業振興議員連盟”の結成時に、時の政権与党民主党の重鎮、鈴木克昌議員から加入を強く勧められたことがありました。観光産業振興を目指す趣旨なら大賛成なので、準備会合に出席しましたところ、実はこの議員連盟は、民間カジノ解禁を目論むものであることがわかり、強硬な勧誘にもかかわらず、私は断固加入を拒否しました。世界中の有名なリゾートカジノでの経験から、そもそも観光振興とカジノ賭博とはなんの関係もないこと、世界有数の観光エリヤには、美術館、博物館、オペラハウス、コンサートホール、寺院などの歴史的建造物、数々の自然遺産や史跡が豊富であることが当然ですが、その中でカジノは決して必須のアイテムではないことは、パリやロンドンなどの格調高い大都市を訪れれば明らかでしょう。
美しい自然や歴史的な観光資源に恵まれ、さらには温泉や本物のホスピタリティーに溢れたこの日本で国際観光客が今ひとつなのはなぜか、当時、関心のある議員仲間と議論したことが思い出されますが、その後、数年足らずでで外国人(とくに日本での買い物をかねた中国人)観光客の激増というありがたい事態となり、まさにカジノと国際観光とは全く関係ないということが実証されたわけです。これからもさらに着実に外国人観光客を引きつけていくためには、行政は音楽、美術などの芸術やスポーツ、科学技術で世界から尊敬され、魅力をもたれる都市づくりに注力することが肝心でしょう。外国人のみならず、その都市に住む市民の生活の質と文化度を高め、日本国内からも一度住んでみたいと憧れられるように都市格(人格に対応する大西正文氏の造語)を高めることを目指すべきで、いわんやカジノ賭博場を誘致するなどもってのほかです。
さらに、無人の人工島にカジノを含む巨大な施設を新たに建造し運営していくためには巨額なインフラ投資(約1.5兆円)が必要となります。当初、カジノ事業者が全額投資するとの甘い言葉に有頂天になった大阪府・市行政(とくにその首長)も最近になって、そんなにうまい話でないことがわかってきて、インフラ費用捻出の口実作りに必死のようですが、住民になんの利便をもたらさず、また将来的に極めて不安定な投資効果しか期待できないカジノ誘致に府・市民の税金が投入されるとなると、まともな頭でカジノ場誘致に賛成する人はいないと思います。現在でも、マスコミの世論調査によりますと府・市民の反対が7割もあることは、まさにこの事実を物語っていると思います。
本会の設立趣意書にもありますように、パチンコを主として、すでに様々なギャンブル大国であるこの日本に、さらなる重大な弊害をもたらしてまで民営カジノを誘致する最大の理由、すなわち(1)観光産業振興、(2)必要なインフラ整備には府・市民の税金でなくカジノ事業者の投資金が使われる、(3)カジノからは十分な収益が期待でき、税収も上がる、のいずれもが根拠のないものであるならば、政府、大阪府・市がカジノ誘致にこれほど前のめりなのは何か別の後ろ暗い理由があるのでは、と勘ぐりたくもなります。2018年7月に実施法が可決されましたが、誘致自治体の申請には議会承認が必要となります。住民に負担ばかりで、なんの便益ももたらさない大阪カジノ誘致に反対する市民の皆様の力で、来年4月の統一地方選では一人でも多くのカジノ反対議員を当選させ、アメリカカジノ事業者との結託が疑われる売国議員や忖度議員を落選させるべく、志を同じくする他の市民連合との大連携で一大キャンペーンを繰り広げ、勝ち抜いていきましょう。ご支援よろしくお願い致します。