2018年12月7日開催された、いちょうの会主催による「モナシュ大学 Charles Livingstone教授講演会」についての参加レポートを掲載。
12月7日開催 いちょうの会主催
モナシュ大学 Charles Livingstone教授講演会報告
“世界一のギャンブル大国オーストラリアのギャンブル対策の現状と課題に学ぶ” 世話人 滝口直子(大谷大学教授)
講演要旨
- オーストラリアの依存症患者は、(1)重度(成人人口の1%)(2)中程度(同3%)(3)軽度(同9%)の患者がおり、それぞれの患者一人当たりにつき、6人、3人、1人、の患者本人と同程度の影響を受けるギャンブルに関係のない人間(親族、友人など)がいる。トータルすると成人人口の25%以上もの人口が何らかの悪影響を受けていることになる。オーストラリアの現状を大阪に当てはめれば、195万人の成人府民が何らかの悪影響を被り、そのうち53万人が重度依存症に関わる問題に悩まされるというとんでもない状況が想定される。気楽な依存症対策で事が済むと考えている行政は、このような警告にどう対処するつもりなのか?
- ギャンブルによる歳入(ギャンブル掛け金収入から払戻金を引いた額)はビクトリア州で58億ドル(約4650億円)、それによる税収は16億ドル(約1280億円)。一方、様々な社会コストを積算すると、約70億ドル(5600億円)となり、行政はそのうち、11億ドル(約800億円)を負担するのみで、あとは市民に付け回される。つまり、社会コストの77%は市民が負担することになり、カジノ税収を全額市民に還付しても、なお市民はカジノ事業者に搾取されることになる。(税収効果を強調する松井知事、吉村市長はどう考えているのか。税収が目的なら、なぜ市営地下鉄(カジノ税収と同額の税収400億円)を民営化したのか?)
- カジノの経済効果は初期のインフラ建設時に比べ、通常の運営時は人件費等のコストカットで大した波及効果は期待できない。逆に周辺地域への負の経済効果が著しい。例えば、100万ドルをギャンブルに使えば3つのjob(雇用)を生むが、同額を食事、レストラン等で消費していれば20以上のjob効果がある計算になり、ギャンブルの経済効果を他の経済活動に比べ大きいと宣伝するのは欺瞞である。
- 公衆衛生学の専門家として、神経生理学者との共同研究を行い、各種ギャンブルの形態と依存メカニズムを調べたが、その結果、いわゆる責任ギャンブル(重度依存症は個人の責任、精神的欠陥という考え方)という予防メカニズムは全く機能せず、ギャンブル事業者の逃げ口上にすぎないことが明らかになった。(ギャンブル依存の最も効果的な予防法はギャンブル施設を作らないことである。)